記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「ただいま・・・」
彼に見つめられたまま、少し恥ずかしくなる私。
「待ってて、今着替えと毛布、持ってくる。」

もう少しでキスしそうな雰囲気だった。
きっと紫苑も同じように感じていただろう。

でも、私たちにはそれ以上進めるようなつながりがなくなってしまった。

彼が何かを断ち切るような表情をしながら、私に背を向けて離れたことに、何とも言えない理由を感じてしまう。

少しして紫苑は私のルームウェアと、温かそうな毛布を持ってきてくれた。

「手伝ってもいい?」
紫苑の言葉に、本当は遠慮したいけれど、そんな体力はもう残っていない私は頷いた。
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