記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される

過去と向き合う

慌ただしい音とともに、寝室から寝ぐせ頭で飛び出してくる彼。
真っ先にキッチンに立っている私を見つけて近づいてくる。

「無理しなくていいのに・・・ごめん、起きれなかった。」
私のすぐそばに立ち、彼は寝ぐせ頭のまま言う。

「今日は体調がいいから。」
そう返事を返しながらも、私は事故のあと、彼がろくに睡眠をとっていないことを知っていた。
入院している間は、私が目を覚ますころには仕事をしていたり、夜病室に戻る時も、深夜を回っていることも多かった。

退院してからも夜中にも、私が気になるのだろう。
何度も何度も目を覚ましては私を起こさないようにして、再び眠りについていることを知っている。

朝目が覚めて、真っ先に彼の寝顔が目に入った瞬間、私は疲れた顔をしている彼をもっと寝かせてあげたいと思った。