記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「桐乃っ!?」
私の異変に紫苑も近くにいた脳外科の医師も近づく。
さっと私の手首に触れた紫苑。
少ししか開けられない視線を紫苑の方に向けると、深刻な顔をしながらベッドの横のモニターに映る私のバイタルを確認しながら脈を触れている。

「お腹は?平気?」
手首から私のお腹にそっと手を移す紫苑。
さっきまでの遠慮がちな姿がないのは、今、完全に彼は表情が変わり、医師の顔をしているからだろう。

脳外科の医師も私のバイタルを見た後で何やら看護師に指示を出していた。
私の周りで話されている言葉が全く分からない。

外国語の授業はとっていたけれど、あまりに流暢ないわゆる”生きた英語”に、頭が追い付かない。
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