一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第13話 婚前契約
『退社』

 一日が終わり、ホワイトボードに書いた。

 ――どうしよう。まだ紡生(つむぎ)さんたちに、『Lorelei(ローレライ)』の麻王(あさお)悠世(ゆうせい)から言われた言葉を伝えてない。

 店舗前で会ったことも言えず、どう伝えたらいいか迷っていた。
 先輩たちを前にして――

『このままだと成長できず、ただのカジュアルブランドとして終わる』
『これで満足しているのかと思うと、残念だ』

 なんて、言えるわけがない。

 ――どんな不遜な後輩よ!

 ホワイトボードに、ごんっとおでこをぶつけた。
 
 ――でも、麻王悠世なら、はっきり言うよね。
 
 余裕があって、自信たっぷりで、王様みたいな人。
 店舗から戻ってから、ずっと私はウダウダしている。
 先輩たちは旅の疲れだと思ったらしく、優しさなのか嫌がらせなのか、紡生さんは私の机に、マムシドリンクを置いていった。
 しかも、ドヤ顔で。

 ――マムシの絵が生々しくて、飲むに飲めない。パッケージデザインをもう少し気にしてほしい。
 
 疲れていると思ってくれたおかげで、いつもより口数が少なくても追求されなかった。
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