一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 案内されて席に着くと、啓雅さんはワインを頼んだ。
 メニューは決まっているらしく、メニューブックはドリンクだけで、私はオレンジジュースを注文する。
 啓雅さんと楽しくお酒を飲む気分には、どうしてもなれなかったからである。

 ――警戒してるというのもあるけど。今日は私となにを話すつもりなんだろう。

「結婚式の会場は、こっちが決める。それから、新婚旅行だが、知り合いに頼んである。パスポートはあるな?」
「ま、待ってください。もう結婚式の話ですか?」
「パスポートは?」
「あ、あります」

 ――怖い。お見合いの時より、威圧的だし、私を物扱いして、なにも話を聞いてくれない。

 啓雅さんが怖くて、テーブルの下の手が震えていた。

「デザイナーの仕事は大変だろう。特に個人の事務所は、給料も安いし、福利厚生もしっかりしていない」
「やりがいはあります」
「シーズンが終われば、すぐゴミになる」
「ゴミって……」

 私が大事にしているものすべてを否定する啓雅さんに、怒りで声が震えた。

「次々と新しいものが出てくる。そうすると、前シーズンのものは着なくなる。そして、廃棄処分だ」
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