一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「そうかもしれませんが、人は原始時代から同じ服を着ていますか? 百年前の服装と今の服装が同じものですか? 新しいものを作って、未来でそれを見た人がまた新しいものを考えるんです」

 強い口調で言った私を啓雅さんは気に入らないというように見た。

「おとなしいのかと思っていたが、そうでもないようだ」

 気に入らないのなら、婚約を取り止めてくださいと言いかけた言葉を飲み込んだ。
 なぜなら―――

「その生意気な態度を改めてもらわないと困る。こっちは清中(きよなか)繊維に金を貸してやっている立場だぞ」
「取引の契約だけじゃなくて、父は借金までしているんですか!?」
「なんだ。知らなかったのか? それだけじゃない。君の妹の入院費も払ってやっているんだ。少しは感謝の気持ちを見せたらどうなんだ」

 ――千歳(ちとせ)の入院費まで?

 ぐらりと視界が揺れた。
 父は私にそんなこと一言もいっていなかった。
 千歳の分は父のお金でしっかりやる――そんな話ではなかったの?

「妹の入院費を啓雅さんが払っているんですか?」
< 107 / 260 >

この作品をシェア

pagetop