一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「そうだ。君の継母に頼まれてね。自分の娘ではないから、払いたくないのだろう。その気持ちはわかる。けど、君にとっては妹だ」

 黙った私を見て、啓雅さんは満足そうに微笑んだ。
 前菜が運ばれ、ご機嫌でフォークを手にする。
 海老のテリーヌと野菜のソースが彩りよく、食欲をそそるはずなのに、私はまったく食欲がわかず、手を出せなかった。

「逆らう女は嫌いなんだよ。君がものわかりのいい女で助かった。せいぜい『いい妻』でいてくれ」

 ――逃げられない。

 いつから、父と継母はたくらんでいたのか、どうやっても私が逃げられないようにされていた。

「俺の『いい妻』になるには、外見も大事だ。君はお見合いの時のような服が似合う。これからはもっと上品で落ち着いた服を着てくれ」

 お見合いで着ていたのは『Lorelei(ローレライ)』の服――今日、私が着ているのは、すべて『Fill(フィル)』の服だった。
 それがスーツであったとしても同じで、素材を考えたり、サイズ感を大きめにしたりと考えている。

「安い服でも、それなりに見える服はあるだろう?」

 ――なにも知らないくせに!
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