一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 言い返そうとした私の前に、啓雅さんは紙を置いた。

「これはなんですか?」
「契約書だ」
「契約書!?」

 結婚届けとは違う。
 そこに書いてあったのは、私が婚約を破棄した場合の慰謝料だった。
 清中繊維と妹への援助した金額のすべてを返金するという内容で、その額は――三千万。

 ――これは、今できた借金じゃない。もしかして、私が専門学校に通っていた頃からずっと借金をしていたの?

 青ざめた私をいたぶるように、啓雅さんは笑いながら言った。

「サインをしてくれるか。君はなかなか反抗的で気が強いようだから、契約書がないと安心できない」

 自分の手が震えているのがわかった。
 これにサインしてしまえば、私は父と継母に利用され続け、啓雅さんのいいなりになって一生を終える。
 そんな未来が、容易に想像できた。
 店内の音楽がまるで葬送曲のように聴こえる。

「モタモタするな。早くしろ」

 啓雅さんは肉にフォークを突き立て、肉汁が落ちるステーキを美味しそうに頬張った――
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