一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「乾井専務と顔を合わせるのは、先月のパーティー以来か」
「そう……だったな……」

 リセのほうが年下のはずだけど、啓雅さんは遠慮がちな態度で、さっきの態度とまったく違っていた。

「INUIグループの専務が、女性を脅して結婚か。いいゴシップネタになりそうだ」
「週刊誌にネタを売るつもりか」
「必要ならばやる」
「脅しているのは、そっちだろう!」
「あぁ、そうかも?」

 リセは笑って私の腕をつかんで立たせた。

「おい! 待て!」
「俺に命令するつもりか?」

 あのモデルのリセとは、まったく違う顔をしていた。
 リセの微笑みは、人を惹きつける。
 けれど、今のリセは人を黙らせ、圧倒する力を持っていた。
 啓雅さんは表情を強張らせ、伸ばした手を引っこめた。

「琉永。行こう」
「で、でも……」
「大丈夫」

 啓雅さんは怖い顔をして、私をにらんでいる。

 ――このまま、啓雅さんを無視して、リセと一緒に行って、本当に大丈夫?

 仕返しせずに、黙って引き下がるようなタイプではない。
 迷う私を見て、リセは私の肩を抱き、耳元でささやいた。

「琉永の婚約者は俺だろう?」
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