一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 あのお金で私を買ったつもりでいる。
 そうだとしたら、啓雅さんは計画的に、私との結婚を考えていたはずで、簡単に諦めるとは思えなかった。
 ようやく手に入った都合のいい相手をやすやす手放すだろうか。

 ――怖い。きっと啓雅さんは怒ってる。父や継母に連絡して、治療が必要な千歳を病院から追い出すかもしれない。

「琉永。送っていく」
「えっ……!? そこまで迷惑はかけられません」
「今さらだろ」
「ご、ごめんなさい」

 過去を思い出して、しゅんっとしてしまった。
 しかも、地下駐車場までついてきて、私ときたら、リセにどれだけ迷惑をかけるのか、情けない気持ちになった。

「琉永に話したいこともある」
「私に?」
「そう琉永に」

 リセの笑顔は、私を安心させる。
 これ以上、なにも悪いことが起きない気がして――パリにいた時もそうだった。
 嫌なこと全部、忘れさせてくれる。
 車のドアを開け、私を助手席に乗せた。

 ――リセは優しすぎる。こんなに親切にされたら、期待してしまう。

 私の隣の運転席に、車のハンドルを握ったリセ。
 リセはがいるだけで、気持ちが落ち着く。
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