一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「パリの時より、笑顔がないな」
「あの時は、リセが私に楽しい気持ちをくれたから」
「俺が?」
「私、パリでリセが出演するショーを観ていたの。リセは誰よりも素敵で、あなたをイメージした服を作りたいって思った。だから、どんどんデザイン画が思い浮かんできて……」

 声が震えた。
 でも、伝えておきたかったのだ。
 啓雅さんと結婚すれば、私は仕事を続けられない。
 自由さえなくなる。

「私、リセに出会えてよかった」

 だから、今、きちんと自分の思いを伝えておきたかった。
 どうしても。

「こっちはそんなつもりないのに、まるで別れの言葉みたいだな」
「え?」

 リセは私の前に一枚の紙を見せた。

「こ、こ、婚姻届!?」
「俺の名前は書いた」
「ど、どうして!?」
「あの男と結婚する前に、俺と結婚すればいい」

 一瞬、リセがなにを言っているのか、わからなかった。

「俺と結婚してしまえば、あいつと結婚せずにすむ」
「待って! そんなボランティア精神で結婚してどうするの? リセにはもっと素敵な人がいるでしょ」

 慌てる私の手の中に、婚姻届けが落ちてきた。
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