一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 お金の支払いで呼ばれましたなんて、恥ずかしくて言えなかった。
 私が困っているのがわかったのか、紡生さんはそれ以上、追及しなかった。

『あー、いいよ、いいよ。千歳ちゃんの病院に寄ってあげて。ただし、遅れた分はきっーちり仕事してもらうからね?』
「ありがとうございます」
『いえいえ』

 私が千歳のことで病院へ行くのは、これが初めてではない。
 周りと気まずくならないよう紡生さんは、突然の休みや早退も快く対応してくれる。

 ――家庭の事情も言いたくないってわかってる。だから、私は『Fill(フィル)』が好きだし、働いていられる。

 優しさに泣きそうになりながら、電話を切り、貴重品が入っている机の引き出しを開けた。
 少ない貯金だけど、あるだけ持っていくしかない。
 今までのアルバイトで貯めたお金は、そんなに多くない。

「足りるといいけど……」

 千歳は心臓が弱く、手術をしたほうがいいと言われているけど、手術費は高額で、働きだしたばかりの私には、とても払えるような額ではなかった。
 父に頼んでも殴られて終わり、継母はそんな私を笑っていた。 
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