一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ――私の学費を出してくれたのは、二年間だけ。それも啓雅さんに借金していたのかもしれない。

 昨日の三千万円という金額を思い出し、背筋が寒くなった。
 そういえば、学費がいらない特待生になった時、父は少しも喜んでくれなかった。
 私を二十歳で結婚させるつもりだったとしたら、あの態度も納得がいく。

「とりあわず、千歳の病院代を払わなきゃ……!」

 電車に乗り、バスに揺られて山の中にある静かな病院に着いた。
 郊外の小さな病院で、交通の便の悪さからか、外来患者は少なかった。
 受付の清算窓口をのぞくと、若い新人の女性事務員が座っていた。
 
「すみません。清中ですが、支払いにきました」
「お支払いですね。少々お待ちください」

 請求書を探し始め、他の人は不在のようで、これはしばらくかかりそうだと思った。

「先に妹に面会してもいいですか? 帰りに寄ります」

 そう答えると事務員の女性は助かったという顔してうなずいた。

 ――千歳に心配させないように、余裕たっぷりな私でいないとね!

 ペチペチ頬を叩き、消毒液の匂いがする廊下を歩いて、エレベーターに乗った。
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