一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 事務所のみんなは想像しただけで、忙しい気分を味わったらしく、ぐったりしていた。
 リセの目が鋭く紡生さんを見た。

「スケジュールを聞いているんじゃないとわかってるだろう? このままだと、普通のカジュアルブランドになって、大量生産される価格の安い服に負けて終わるぞ」

 紡生さんと恩未さんの顔色が変わった。
 いつもふざけている紡生さんなのに、今は違う。

「それは……」
「気づいているなら、経営者として対策をするべきだ。ほそぼそと趣味でやるというのならいいが、アパレル大手のINUIグループが『Fill(フィル)』に目をつけている」

 ――もしかして、私のせいで?

 リセを見たけれど、私のほうを見ていない。

「すでにINUIグループから声をかけられていたか」
「もちろん。断ったよ? あんな馬鹿な取引はないからね……!」
「紡生さん、なんて言われたんですか?」

 啓雅(けいが)さんが私に差し出した契約書は理不尽なものだった。
 それが仕事でも同じなら――

「ブランド名はなくなり、私をINUIグループの企業デザイナーとして働かせて、そのデザインを大量生産するって話だ」
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