一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 そのデザイン画は、紡生さんのものだ。
 つまり、リセから見て、ボツだということだ。

「世界を選ぶか、INUIグループに潰されるか、どちらがいい?」

 リセが聞くまでもなく、全員、INUIグループのに行く気はない。

「INUIグループには行かない……」

 紡生さんは絞り出すような声で言った。
 きっと今までで一番自分のデザインを貶されたはずだ。
 それでも紡生さんは『Fill(フィル)』を残したいと思っている。

「よし。それなら決まりだ」

 リセはテーブルにあったデザイン画をすべてゴミ箱に捨てた。

「リセ! なんてことするの!」

 私がゴミ箱からデザイン画を拾おうとしたけれど、それを紡生さんが止めた。

「甘い言葉を言って誘うINUIグループより、毒舌辛口な麻王理世を私は信じる。悔しいけど、『Fill(フィル)』は成長が衰えてきていたのは事実だ」
「おい……。誰が毒舌だ」
「みんなには言わなかったけど、紡生と私には、以前からINUIグループへ引き抜きの話が来てたの」
「引き抜きって……! 紡生さんと恩未さんがいない『Fill(フィル)』じゃ、やっていけません!」
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