一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 本邸の自分の部屋に入ったが、荷物のほとんどは、すでに引っ越し先へ運ばれていて、がらんとしていた。
 自分で運ぼうと思っていた箱がひとつあるだけだ。
 この箱には、琉永からもらった物が仕舞われていた。

「琉永のあの様子だと、初めて会った時のことは、覚えてないだろうな」

 俺が初めて琉永に会ったのは、専門学校が主催しているファッションショーだった。
 悠世が目を付けていた椛本(かばもと)紡生(つむぎ)埴田(はにだ)恩未(めぐみ)の二人が、自分たちのブランドを立ち上げてしまったため、『Lorelei(ローレライ)』で働けそうな人材を探していた。
 あの悠世と働くのだ。
 簡単に見つかるわけがない。 
 学生を装って、専門学校のショーへ出向いた。
 そんな中で出会ったのが、彼女――清中(きよなか)琉永(るな)だった。
 笑顔でパンフレットを配布している学生たちは一年生のはずが、受付に誰もいない。

「貧血? 大丈夫?」

 受付スタッフを探していると、すぐそばから、女性の声が聞こえてきた。
 声の先には、具合が悪いのか、受付のスタッフの一人がしゃがみこんでいた。
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