一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 それで、全員がそちらに意識が向いてしまい、受付がからになっていたらしい。

「琉永さん。ごめんなさい。準備中ですよね」
「まだ本番まで時間があるから平気よ。医務室まで行けないみたいね。椅子を並べるから、一度そこで横になりましょうか」

 手を貸そうと思っているうちに、彼女は素早く椅子を並べ、人の目にふれないよう衝立てで隠す。
 そして、後輩に指示を出す。

「私が受付をするから、先生を呼んできてもらってもいい?」
「は、はいっ!」
 
 身近に体が弱い人間がいるのか、具合が悪くなった後輩を見ても動揺せず、彼女だけが落ち着いていた。
 そして、ショーの雰囲気を台無しにしてしまわないようパンフレットを笑顔で配る。
 
「本日はようこそ。ショーをお楽しみください」

 ――プロだな。

 俺の番になって、パンフレットを手渡された時、なにか話したいと思ったが、それは叶わない。

「清中さん! ありがとう!」
「準備に戻って!」

 教師たちが駆けつけ、彼女は一礼して去っていく。
 やはり、忙しかったのか、走っていった。
 受け取ったパンフレットを見ると、そこには『清中琉永』という名前がある。
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