一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ステージから去る前に、彼女はブーケを投げた。  
 ブーケは俺の手元へちょうど落ち、彼女はステージで精一杯なのか、笑顔で手を振るだけ。

 ――運命が手の中に落ちてきた。

 そう思ったのは、きっと気のせいなんかじゃない。
 ランウェイに全員が集合し、撮影が始まった。

 ――清中琉永は、他からもスカウトが来るかもしれない。

「優秀な琉永ちゃんが、私達のデザイン事務所に入ってくれて嬉しいわ」
「もうバイトで働いているけどね。やっと春から正式に採用できる」

 その声に振り返ると、そこには『Fill(フィル)』の二人組がいた。

 ――そうか、彼女は『Fill(フィル)』に入るのか。

 この時、自分でも思っていた以上に、がっかりしていることに気づいた。
 そして、それと同時に。

 ――手に入れたい。

 悠世と違って、俺にはやりたいことがなかった。 
 だから、麻王グループを継ぐことに決めた。
 心から欲しいと思うことのない人間だと思っていたが、まさか今になって、渇望するとは。

 ――彼女を引き抜き、『Lorelei(ローレライ)』へ? いや、違う。
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