一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「ここから数点、すぐに商品化する。INUIグループが既存の商品を模倣して大量生産してくるだろうから、こっちはそれより前に、新しい服を出す」
「けど、そんなお金はまだ……」

 恩未さんが言うと、理世が契約書を取り出した。

「麻王グループ傘下に入れば、麻王の力を使える」
「でも、理世。先輩たちは……」

 ぽんっと私の肩を紡生さんが叩いた。

「気にしないでいいよ。琉永ちゃん。今、『Fill(フィル)』は分岐点にいる。『Lorelei(ローレライ)』のように世界的なブランドになるか、ファストファッションのINUIグループに負け、潰れるか」

 いつもはふざけている紡生さんが真面目な顔をしていた。
 順調に見えた『Fill(フィル)』だけど、トップに立つ紡生さんは、この先を考え、ずっと迷っていたのだと知った。
 目指す場所があっても、今の『Fill(フィル)』では難しいと悟って――

「『Fill(フィル)』らしい服を作り続けたいというのなら、道はたった一つ。世界に出るしかない」
「選ぶまでもないよ。私たちはもっと上にいく。このまま、おとなしく潰される気はないからね!」

 誰一人として、INUIグループに加わる気はなく、『Fill(フィル)』を守りたいと思う気持ちは、全員同じ。
 今、『Fill(フィル)』は今後を左右する大きな分岐点に立っている。
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