一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 複雑な心境だったけど、そっと人の隙間を縫ってもぐりこんだ。
 なんとか理世の顔が見える場所まで、移動できた。

「新事業がうまくいくように願っております」
「ありがとうございます」

 すでにやり取りが始まっているようで、理世の声が聞こえてくる。

「社長と会長は、ご結婚相手のことについて、なにかおっしゃられていましたか?」
「父と祖父は、静かに見守ってくれていますね」

 理世のほうはまったく動じず、逆に美しい顔立ちに圧倒された質問者が、自然と丁寧な態度になっていた。

「では、お金目当ての女性に、騙されたと週刊誌に書かれていましたが、専務自身は、ご結婚相手に対して、どう思っていらっしゃいますか?」

 理世はそこで初めて微笑んだ。
 その微笑みに、誰もが動きを止めた。
 あまりに綺麗だったから、見惚れてしまったのだとわかった。

 ――美人すぎる。

 見慣れているはずの微笑みなのに、私までぼうっとなってしまった。
 さすが、モデルのリセをやっていただけある。

「そうですね。逆に俺のほうが、彼女を金と権力で、縛りつけてしまった気がして、後ろめたさを感じます」
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