一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「ええ。そうです。いつか彼女の力になりたいと思っていました。たとえ、男として好きになってもらえなくても、ですが」

 私が意識する前から、理世は私を知っていたという事実を知り、胸が苦しくなった。

 ――偶然の出会いじゃなくて、理世はずっと私を見守ってくれていたの?

「『Fill(フィル)』はこの先、確実伸びていく若いブランドです。俺が『Fill(フィル)』を買収するために、彼女を利用したと思われてもしかたないことでしょうね。これを聞いて、彼女は俺を嫌いになるかもしれない」

 理世の言葉を聞いて、私は飛び出していた。
 理世は自分を悪く言うけど違う。
 助けられたのは私のほう。

「理世は私を助けてくれた。利用されたなんて思ってない!」
琉永(るな)

 人の中から飛び出してきた私を理世は抱き締めた。
 うるさいシャッター音の中で、理世がくすりと笑う声がした。

「知ってる」
「えっ!?」

 理世がカメラに私の顔が見えないようにして、私の唇をふさいだ。
 わぁっという歓声とさっきよりうるさくなったシャッター音。
 そして、唇を離した理世が低い声で言った。

「俺はそんな善人じゃない。知ってるだろ?」

 ――あれは演技!?

 さっきとは、まるで別人の悪い顔をして、私にささやく。
 それは誰も知らない顔だ。
 私にだけ見せる顔。
 私も記者も――全員が理世の罠にはめられてしまった。
 でも、騙されたことに気づいたのは、この場で私だけだった……
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