一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 けれど、中に商品はまだない――これは。

「『Fill(フィル)』の海外初店舗だ。琉永が担当する」
「私が……」
「そして、琉永のブランドも置く」
「私のブランド!?」
「そう。『Fill(フィル)』の中に、新しいブランドを作る」

 細い月から満月へ――私の夢が満ちていく。

「ここに私のデザインした服が並ぶの? 夢じゃないよね?」
「ああ」

 看板には『Fill(フィル)』の文字があった。

「理世、ありがとう」
「俺にお礼はいらない。実力がなかったら、ここまでこれなかった。そうだろう?」
「うん……。でも、理世がいなかったら、ここまで目指そうなんて、きっと誰も思わなかった」
「ここまで?」

 理世が不満そうな顔をした。

「え?」
「パリに店を出して終わりなわけないだろう? 目指すは世界中に店舗を置くことだ」
「えっー!」

 さすがに驚いたけど、理世は少しも驚いていいなかった。
 それがやけにリアルで、私から『できません』なんて言えなかった。

「だから、これはまだ夢の第一歩だ」

 私は小さい店舗をぐるりと見回した。
 まだペンキの匂いが残っていた。
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