一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ――こんな時、お母さんがいてくれたら。

 そう思った瞬間、私の目の前で子供が転んだ。

「お、おかあさん……。どこぉ……」

 はぐれてしまったのか、心細さから女の子は膝をついて起き上がれずにいた。

「大丈夫? 迷子?」

 尋ねても泣いているだけで、わからない。
 結婚式に招待されたのか、女の子はフリルとレースがついたワンピースを着ていて、とても可愛く着飾っていた。

「泣かないで。えっと……」

 ハンカチを取り出して、ウサギを作る。
 私の母が教えてくれたハンカチのウサギ。

「ウサギ?」
「そう。どうぞ」

 ハンカチのウサギをあげると、女の子は泣き止んで立ち上がった。
 落ち着いたのか、周りを大きく見渡して、笑顔になった。

「あっ! おかあさん!」
 
 女の子は母親と思われる女性のところへ走っていった。

「ウサギ、ありがとう!」

 振り返り様に、大きな声で女の子は言った。
 
 ――私はうまく笑顔が作れただろうか。

 お母さんと去っていった女の子がうらやましかった。
 
「せめて、お母さんが生きてくれていたら……」
 
< 3 / 260 >

この作品をシェア

pagetop