一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 私の亡くなった母は、とても器用な人で、手作りのワンピースや手提げバッグ、お気に入りの人形の服を作ってくれた。
 とても優しい母だった。
 亡くなった母の遠い思い出にすがらなければならないほど、私、清中(きよなか)琉永(るな)は、夢も希望も奪われ、未来に絶望していた。

 ――私があの子みたいに泣いても、誰も助けてはくれない。

 自分の力でなんとかしなくちゃ――そう思った時、スマホが鳴り、画面を見ると、継母からのメッセージが入っていた。

『お見合い場所に遅れずに来るように』

 たったそれだけの業務的なメッセージ。
 父の後妻である継母は、血のつながらない私と妹を嫌っている。
 何度も父は経営を失敗し、そのたび、継母の実家にお金を借りていて、父は継母に頭が上がらない。
 そして、もう貸す金はないと言われていた。
 だから、継母にとっても、私の結婚はなにがなんでもしてもらわなくてはならない結婚だった。

「結婚が決まってるなら、お見合いの必要ってあるのかな」

 ため息をついた。
 形だけのお見合いに、なんの意味があるっていうの?
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