一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「いいえ。気持ちが落ち着く香りですね」

 リセは透明なグリーン色の香水が入った瓶を私に差し出した。

「気に入ったのなら、琉永(るな)にやるよ」
「も、もらえません。こんなのもらったら、私、忘れられなくなる……」
「忘れる? 俺の香りだ。ちゃんと覚えておけよ。それに、女装している方が本物だと思われたら困る」

 私の記憶にいつまでも残り続けるつもりなのか、リセは私の手に香水の瓶を握らせた。

「あの……。どうして女装しているんですか?」
「仕事だ。別に趣味ではない」
「モデルの仕事?」
「そう。モデルは頼まれたから、やっているだけで本業は別」

 誰よりも綺麗で印象的だったリセ。
 モデルが本業じゃないのなら、本当のあなたはいったい何者なのだろう。

「琉永。俺を忘れられると思うな」

 忘れると言った言葉に怒ったのか、リセは顔を近づけ、その鋭い両眼で私を捉えて、唇を重ねる。
 香水瓶を手にして、首の後ろに手を回すと、私の首筋に香水をつける。
 ひんやりした感触に体が震え、リセの腕をつかんだ。
 リセはくすりと笑って、私の首を指でなぞり、唇を這わす。

「ま、待って……っ!」
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