一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 キスするかしないか、ギリギリのラインで、顔を止め、リセは私に言った。

「琉永。『Lorelei(ローレライ)』に負けないくらいのデザイナーになれ」

 どうして『Lorelei(ローレライ)』なのだろう。
Lorelei(ローレライ)』は謎の美少女モデルローレライをイメージして作られたブランドだ。
 デザイナー麻王(あさお)悠世(ゆうせい)が手がけるブランドで、たった数年で世界を代表するブランドに成長した。
 一番の強みは麻王グループの傘下にあるということだ。
 資金力も広報力も他のブランドには負けない。
 無名のモデルであるローレライがアーティストのMVや雑誌に載ると、一気に話題になり、あっという間に有名になった。
 今では押しも押されぬ世界的デザイナーの麻王悠世。
 そんなデザイナーを私が目指す?
 返事もできずにいる私にリセはまるで子供に頑張れよと言い聞かせるように、頭をぽんぽんっと叩いた。

「次に会う時は、俺を女と間違えるなよ」

 リセは間違えられたことを気にしていたのか、私から離れ、背中を向けると、軽く手をあげ、私の前から去っていった。
 広い部屋に取り残され、一人になった私はぽつりと呟いた。

「次って……? また会えるの?」

 もうお別れだと思っていた私に、この夢には続きがあるとリセは教えた。
 彼と同じ香りが、私を包み込んでいて、リセとの出会いを夢で終わらせはしなかったのだった――
< 69 / 260 >

この作品をシェア

pagetop