一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「用ってほどでもないんだけど、椛本(かばもと)紡生(つむぎ)埴田(はにだ)恩未(めぐみ)のブランドが、どんなふうに成長しているのか、見に来ただけだよ」

 店舗内をぐるりと見回し、目を細め、口元に嘲笑を浮かべた。

「『Lorelei(ローレライ)』にくれば、もっといい服を作れたのに、彼女たちは独立が早すぎた。残念だよ」

 店頭にあった新作のトレーナーを眺め、感想を述べた。

「紡生さんのデザインは、じゅうぶん素敵です。このトレーナーだって、肌触りがいいように考えられていて、動きやすくて余裕のあるサイズ感にしているんです」

 それなのにだらしなく見えない。
 そのギリギリのラインでデザインしてあるのだ。

「ああ、気に障ったなら悪かった。そうじゃない。『Lorelei(ローレライ)』で働いていれば、彼女たちはもっと上にいけたってこと。それなのに、これで満足しているのかと思うと、残念だっていう意味だよ」

 なにも言い返せなかった。
 私はこれでベストだと思っているのに彼は違っていた。
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