一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 私の背後で、弟と会話している声が聞こえた。
 人のざわめきが大きくて、よく聞き取れなかった。
 でも、後ろを振り向いて、再び彼を見る勇気がない。
 私はなにも言い返せないまま、ただ返事をするだけで精一杯だった。
 それが悔しい。
 もっと私に知識があって、ちゃんと受け答えできたら、彼と対等に話せたはず。

 ――リセ、私は『Lorelei(ローレライ)』の麻王悠世と肩を並べられるようなデザイナーになれるの?

 自分に自信がない私は、その場から一歩も動けなくなり、足元を見つめた。

『これで満足しているのかと思うと、残念だっていう意味だよ』

 その言葉を理解できなかった。
 きっと紡生さんなら、彼が言っていた言葉の意味がわかったに違いない。

 ――私と違う世界にいる人たち。

 上を見ることすら、できないくらい私は打ちのめされていたのだった。
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