一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 父も事情を知っており、息子が犯罪者でなくて安心したが、俺から見たら――
 
「悠世は犯罪ギリギリだからな」
「兄に向かって、ひどいこと言うなぁ」
「事実だ」

 色素の薄い髪と瞳、白い肌をしたローレライは、大勢の前で一言も話さず、皿の上の照り焼きハンバーグをじっと見つめている。

「ローレライ。それは肉じゃないよ」

 悠世が優しく彼女に声をかけ、ようやくハンバーグに箸を伸ばした。
 肉を好まない彼女の皿には、肉の代わりに豆腐で作ったハンバーグが出されていた。
 
 ――悠世の優しい目も声も、ローレライだけに向けられている。

 それがわかるからこそ、祖父はなにも言わない。
 稼いでいるというのもあるが、悠世が(生意気で)難しい子供であったことは、親族全員の知るところである。
 もちろん、弟である俺もたびたび、悠世に巻き込まれている。
 
 ――悠世に巻き込まれたという点では、ローレライも同じか。親族にすれば、同情のほうが強いな。

 最初からローレライは無口で、ほとんどなにも話さない少女だった。
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