一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「会長が言うように、アパレル部門を悠世に任せ、将来的には、グループ全体を理世に任せる。それでいいな? 悠世、理世」
「俺はいいよ」
「それで構いません」

 父はホッとした表情を浮かべ、祖父を見る。
 祖父はうなずいた。

「どちらも可愛い孫だ。二人の性格を考え、悠世は自由にやらせたほうがいいと思った」

 麻王の長男である悠世がデザイナーの道を選んだ時点で、自動的に俺が麻王の跡継ぎになることが決まったようなものだった。

 ――遅かれ早かれこうなるのは、俺も悠世もわかっていた。

 幸か不幸か、俺に固執するような夢はなにもなく、両親に決められた道をただ歩いてきた。
 親族の評判も良く、扱いにくい悠世に比べ、扱いやすい俺に、好印象を持っている。

 ――そうなるように積み重ねてきただけだ。

 俺は悠世よりも要領がいい。
 信頼を重ねるだけ重ね、最後の最後で、俺は自分の望みを通す。
 俺が望むのは、たったひとつだけ。
 祖父も父も、俺の本質を見抜けていない。

「理世。お前が後継者だ」
「ありがとうございます」

 父はやんわり悠世に嫌みを言うのも忘れない。
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