一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「優秀な弟がいてよかったな、悠世」
「そうですね。好きなことができるので助かっていますよ」

 嫌みを言われても悠世は平然としていた。
 父は『まったく、この息子は!』という顔で、母は黙って料理を楽しんでいる。
 お嬢様育ちの母にとって、経営は父任せ。
 機嫌良く料理を口に運んでいるところを見ると、息子が優秀でよかったと思っているに違いない。

「さて。後継者がどちらか決まり、今後の動きもはっきりしただろう。そこで、重要な話がある」

 祖父は今日一番のいい笑顔を浮かべている。

 ――ああいう顔をしている祖父は、ろくでもないことを言い出す時だけだと決まっているんだよな。
 
「老い先短い身。死ぬ前にひ孫の顔が見たい」
「え? 当分、死にそうになさそうだけど?」
「悠世っ!」

 父に叱られても、悠世はまったく気にしていない。

「だってさぁ。理世もそう思うだろ?」
「できることなら、少しでも長生きしてほしいですね」

 祖父は真っ白な髪をし、着物姿で車椅子に乗っている。
 膝が痛いというだけで、あとはまったく問題ない。
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