政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
──そんなに焦って来るくらいなら、俺の側から離れるなと言って閉じ込めてしまえばいいんだ。
 澄ました顔で理解のあるフリなんかしているからそんなことになる。

 それにそんなに大事なんだったら、最初から言っておいてほしかった!
 なんなんだよ!澄ました顔で『そうでもしないと結婚しないから』だ⁉︎
 むちゃくちゃ、独占欲強いんじゃねーかよ!

「俺はとりあえず、義理は果たしたんで」
「祐輔」

「何だ」
「とりあえず、礼を言う。ありがとう」

「どういたしまして。いつまでも放し飼いしていると、どうなるか分からないぞ」
 一瞬だけ、ちょっとだけ槙野は、浅緋を可愛いかもしれないとは思ったのだ。

「飼う気はないからな」
「はいはい」
 槙野はくるりと背を向けた。

 なんだあれ。
 むちゃくちゃ思い合ってるじゃねーかよ。
 政略結婚どころか、ものすごい溺愛だ。

 それに、浅緋は無自覚すぎる。
 賭けてもいいが、片倉はあの無自覚に振り回されているはずだ。

 自分も先程散々振り回されたことを考えたら、片倉も振り回されてしまえばいいと槙野は思ったのだった。

──ざまーみろだ。

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