政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 社内では、浅緋の結婚は片倉が会社を自分のものにするがための人質的な、いわば政略結婚なのではないかと言う向きもある。

 もしも後者ならばそれは浅緋には残酷すぎる。
 しかし、である。

 昨日の槙野社長の様子からするに、社長は片倉の気持ちを汲んであの場所に現れ、浅緋をさらったのだと思われた。

 であるならば、気持ちがない、ということはないのではないか、という結論に池田は達する。

──多分その結論は間違ってはいないと思う。

 今だって、こんな風に悩んでいる浅緋の風情はとても綺麗なのだから。
 片倉だってきっと惹かれているはずだ、とは思うけれど。

 池田は迷ってしまった。
 それって、私が言うことではないような……。
 そもそも、片倉がどんな人物か分からない。

 もしかしたら、浅緋を手玉に取ってしまうような人物かもしれないし、槙野社長は片倉の意を汲んでいたとしても、人質的に束縛しているかもしれないことを未だ否定はできないのだし。

「いつものお2人がどんな感じか分からないけれど……」
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