政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 きっと、怖がらせた。
 もしかしたら、嫌いになったかもしれない。

 やっとうまくいき始めていた関係性だったのに、今日の片倉の行動で全て壊してしまったかもしれない。

──浅緋を怖がらせたくない。

 そんなことを言い訳に、翌日は家を早く出てしまった。

 本当は自分の方が、浅緋が嫌悪の表情を見せたらどうしようかと思って怖かったのに、だ。


「レセプション……」
「そうです。園村浅緋様もご一緒に出席されることになっていますよね?」
 秘書である長野に言われて、初めて思い出した片倉だ。

 予定を失念するなど、普段ならそんなことはないのに、あんなことがあってすっかり忘れていた。
……というか、むしろそれどころではなかったのだ。

「浅緋もきっと準備していないな。伝えるのを忘れていた」
「お2人で出席することになっているのですから、今更お1人で、というわけにはいきませんよ」

 長野は何かを察しているのか、そんな事を言う。
「分かった。けれど、浅緋は準備していないだろうし」
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