政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「ふん？」
　実を言うと片倉はそれは園村からも聞いていた。

　旧態依然とした人物は今も会社にいる、と。

　それは、片倉たちが新しいことを始めれば、絶対に目の前に出てくるだろうし、邪魔をするだろうと聞いていたのだ。

　園村から会社を受け継いで、今までの事業継承中でも、取締役会の中でも蠢(うごめい)いていることは十分に感知はしていた。

　それでも今までの会社への貢献もあるだろうし、大きな動きはしてこなかったし、何もできないだろうと放置していたのだ。

　まさか、浅緋に目をつけるなんて思っていなかった。正直そこまで馬鹿だと考えていなかったこともある。

　今の浅緋は創業者の娘、と言うだけで社内では何の権限もない。

　そうすることで、園村と片倉は彼女を社内のゴタゴタから守る、ということはあらかじめ決めていたことなのだ。

　なのに、その浅緋にコンタクトを取った？
　浅緋にしてみれば、訳の分からないことだろう。

　それに知らない人物に急に呼び出されて、おそらく禄(ろく)なことは言われなかっただろうに、嫌な思いや、怖い思いをしていないだろうか……と思うと本当は今すぐにでも駆けつけたい。
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