政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「だ……いじょうぶです。ごめんなさい」
「まだ、いろいろおつらいですか? お食事できそうですか?」

「いえ。あの、父のことは大丈夫なんです。その、もともと入院期間もありましたし、その分覚悟もしていたので。ただ……そうですね、たまにまだ父が生きていて会社に行っているだけのような、病院に行けば会えるんじゃないかって思ったりすることは、ありますけど……」

「それは……」
 片倉は言葉を失ったようだった。
「つらいですね」

「そうなのかしら」
「浅緋さん、泣きましたか?」
「え?」

「僕は園村さんから、あなたの話をたくさん聞いているんです。園村さんは、その……とてもあなたのことを可愛く思っていて子供の頃の話から最近の話まで、僕はいろいろお伺いしました」

 父が誰かに浅緋のことを話すなんて、あまり考えられなかったから浅緋は驚いてしまった。

「父が……」
「ええ。桜の話は……笑ってしまった」

「桜?」
「ご自宅の桜が剪定された時に、坊主にしちゃうなんてひどい! と泣いて怒った話ですよ」
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