政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 政略結婚と周りに何度も言われたこともある。

──好ましく? 好ましくって、好きってこと?

 しかも、浅緋が片倉のことを知る前からなど、意味が分からない。

 今分かっているのは、端正な片倉の顔が近くて、嬉しそうで、そして抱き上げている浅緋を下ろしてくれる気配がない、ということだ。

「あなたに告白の先手を取られてしまうなんて、情けないんですよ。もう、あなたの前では僕は失敗ばかりだ」

 綺麗な顔で、眉が下がって少しだけ苦笑している。
 そんな姿すら素敵なのに。

 情けない?失敗?片倉にそんなところがあるなんて、浅緋には考えられなかった。
「失敗? どの辺が? 慎也さんにそんなところはありませんよ」

「全く、あなたはどこまで僕を夢中にさせたら気が済むんですか?」
 やっと、片倉は浅緋を地面にとん、と降ろす。

「お詫びします。とても卑怯でした」
 そうして、片倉は浅緋の両手を自分の手で包む。
< 155 / 263 >

この作品をシェア

pagetop