政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋は抱きしめてくれている片倉にしがみつくのがやっとだった。

「その……今朝、妙な態度を取ってしまった理由についてと、その経緯についてです」
 さっきよりも近い距離とその声に、浅緋は鼓動が大きくなるのが分かった。

「はい」
「嫉妬していたんです。あなたが男性といる、と聞いて」

──嫉妬?慎也さんが?
 浅緋から見た片倉は、そんなこととは無縁に見える。

「あの、でも私その方のことはなんとも思っていませんし、本当に私知らない方が苦手で……」

「分かっています。それでも、そんな人見知りのあなたが男性と同席しているというだけで、おかしくなりそうでした。それくらい、僕はあなたが好きなんだ。そして、僕はそれを知られたくなかったんです」

「どうして?」
「僕はあなたに怖がられて、嫌われることを恐れていたんです」
「怖がるなんて、そんなことありえないのに」
片倉は浅緋をきゅっと抱きしめる。

「そんなに人見知りで苦手なのに、僕のこと、怖くないんですか?」
「本当……そういえばそうだわ。でも、怖くないです。苦手でもないです。だって、慎也さんはそんな私が怖がらないようにいつも気遣ってくださっていますよね」
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