政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その間にも口の中の色んなところに片倉の舌が触れ、その繊細な感触に身体の中心がぞくんとしたのだ。

 浅緋はそれをどうすればいいのか分からない。
 お腹の奥がきゅっとするような、背中がぞくぞくするような足元も不安定になりそうな、そんな感じだ。

 口がすっかり塞がれているから鼻で息をしているけれども、それも大きく息を吸ったりしたら、息が荒くなっているのを片倉に知られそうで恥ずかしくて、大きく息をすることも出来ない。

「んっ……」
 必死でそのキスを受け止めていたら、つい、そんな声が漏れてしまって、浅緋はさらに恥ずかしくなった。

 その時、やっと片倉が浅緋をそっと離してくれた。
 ぷはっ……と水面から顔が出た人のように息をしてしまう。

「浅緋さん、鼻で息して?」
「い……ちおう、してたんですけど。それでも間に合わなくて。ドキドキしすぎて……」

「本当だ。顔、真っ赤だな。」
「すみません……」

「可愛いです。僕の気持ちも伝わった、と思っていいのかな」
 こくっと浅緋は頷いた。
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