政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「まだ、婚約は破棄しますか? 僕はあなたとしか結婚したくないんですけど。改めて、婚約者になってもらえますか?」

 それはもちろんだ。
 浅緋にだって、片倉としかこんなことは出来ない。
「はい」

「これからも、思ったことは口にしていきましょう。僕もあまり得意ではないんですけど、そうしないとあなたは一人でとんでもないことをしそうだ」

 眼鏡をかけ直した片倉はくすくす笑っていた。
 そんな表情は今まで見せてくれたことはない。

──こんな風にすれば良かったのね。

 困っている時は困っている、と、好きな人には素直に言ってもいい。
 この人には、心を開いても大丈夫。

 今までは家族が浅緋のことを守ってくれていたけれど、片倉には弱みを見せても大丈夫なのだ。
 そして、片倉のことも浅緋はとても大切だと心から浅緋は思える。

「で、浅緋さん? 浅緋さんのお願いって何ですか」
「……あ」

そう片倉に聞かれて、浅緋は言い淀んだ。
「……っ、その、し……」
「し……?」
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