政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その想いを考えたら、どこまででも幸せにしたいし、大事にしたい。
 片倉は今はただ、ひたすらにその気持ちに満たされていた。

──朝までこうやって抱きしめていても構わないんだがな。

 満たされるというのは、こういうことなんだな、と腕の中の浅緋を感じて思う。

「し……っ」
「うん?」

 浅緋は自分がこれから言おうとしていることが、あまりにもはしたないのではないか、とか、せっかく好きと言ってもらえたのに呆れられたらどうしようと思うと、なかなか言葉を発することが出来なかったのだ。

 浅緋のお願いは、片倉と寝室を一緒にしてもらうことだった。

 池田に相談してから、ずっとずっと気になっていた。
 なにが起こるのかは正直ピンときていないのかもしれない。

 それでも、こうして想いを通じ合わせることが出来て、その時には真っ先に言おうと思っていたのだ。

「寝室を……ご一緒してほしいんです」
 片倉はくらりとした。

──意味が分かって言っているのだろうか?
< 170 / 263 >

この作品をシェア

pagetop