政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 片手を額にあてて片倉は、はーっと深くためいきをついた。
 槙野にしてみればこんな片倉は見たことがないのだ。

「大事だよ。大事過ぎて触れるのも怖い。嫌われたらどうしようかとそんなことばかり考えてしまって。こんな風に思うことは今までなかったな」

「ゆるふわが片倉を嫌うことなんてないと思うがな……」
「ん?」

「別に時期を外したってわけじゃないだろ。まだ、ゆるふわの心の準備が出来るまでお前が待ってるってことだろ。あいつはそういうの、慣れてなさそうだしそれでいいんじゃないのか?」

 片倉の先々まで考えることは良い事だと思うが、逆に考え過ぎてしまうこともある。槙野は直感的に判断する事が多いのだ。

 そんな槙野の判断を、片倉も当てにしていることは確かなのである。

「そうだな。今まで僕はこういうことで失敗がないから、お前に聞くのが間違いないんじゃないかと思ったんだが、お前に話してやはり正解だな」

「まるで俺が失敗だらけのような言い草だな」
「そんな風には……」
 そこで笑顔で言葉をとめる片倉だ。

「そこで言葉を止めるな! 感じ悪いぞ!」
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