政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 はあ……とため息をついた槙野はいつにない片倉の様子に、親友の相談に乗ってやることにした。

「聞くけどな、ゆるふわはお前が触れるのもダメなのか?」

 槙野に聞かれて片倉は少し考える。
 確かに、赤くなってしまったりはするけれど、本気で嫌がられたことはない。

「それは、ないな」
 これから、夫婦になるのなら、膝の上に乗せるのは当然だといったら、こくん、と頷いて素直に乗っていたし。

 近くで見る浅緋の可愛らしさはまた格別だった。

「じゃあ、あとは時期次第だろ。前に会社の奴と食事に行っていたときは、触れられるのもダメって感じだったぞ」
「触れられるのも?」

「指輪みせてくださいー、とかって覗き込まれただけで、身体ごと避けていたからな」

──そいつ、どこか飛ばすか……。

「言っておくが、そいつ自身は優秀な営業社員なんだからな、どこか飛ばそうとかするなよ」
 槙野は片倉の考えを先読みしてそんな警告をする。

 片倉は首を傾げた。
「ダメなのか?」
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