政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 少しだけ拗ねたような表情の片倉がなんだか可愛らしく見えた。
 本当は帰りたいのだけど、とでも言いたげだ。

「でも、浅緋がいる会社だし、園村さんにもお願いされているから、無下にはしない」
「よろしくお願いします」
 そう言って、浅緋は頭を下げた。

 自分が継げればよかったのだろうけれど……。
 片倉はデスクに両腕を組んで置く。
 そうして、急に黙って考え込むような表情を見せる浅緋を見た。

「浅緋、何を考えているの?」
「あ、いえ……、私が継げればよかったんでしょうけれど……」

「浅緋が継いでいたら、今僕はここにはいない。浅緋が継げなくてよかった」
「私、怒っていいのか、喜んでいいのか……」
 そんな浅緋の言葉に片倉はくすりと笑う。

 椅子から立ち上がった片倉は、今度は浅緋の前に立つ。
 今の今まで2人の間にはデスクがあったのに、急に距離が近くなって、浅緋は顔が赤くなってしまった。

「あの……慎也さん、お仕事中なので……っ」
「うん。僕がプレゼントしたネックレス、つけているかなって」
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