政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「片倉、お前まさかそれだけのために来たんじゃないよな?」
「まさか」

 そう言って片倉は笑ったけれど槙野は最近の片倉を見ていて、そうでもないとは言い切れないんじゃないか……と思い始めていた。



 そうして、家に帰った浅緋は早速寝室に向かってみる。
 ベッドの上にはこの前のクマが、今日は可愛い香水の瓶を持っていた。

 忙しいはずの片倉が時間を作ってプレゼントを置きに来る。
 確かに意味がありそうだ。

 クマの持っている白色のパッケージには臙脂のリボンがかかっている。
 品があって、シンプルなデザインだ。

──香水……?

 浅緋も知っているブランドだったけれど、香水を出していることは知らなかった。

 パッケージを開けてみると、中は透明の綺麗なボトルが入っていた。
 箱もだけれど、中の瓶もとてもシンプルなデザインだ。

 浅緋はぽん、と蓋を外して、スプレーしてみる。
 花のような香りだけれど、パウダリーなシャボンのような香りもした。
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