政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋が香水に対して持っていた、ツンとする香りのイメージとは全く違うものだった。

 清廉で爽やかで上品。
 しかも、少し香りが飛ぶと、ほんの少しの甘さとリラックスできそうなグリーン系の良い香りになるのだ。

 これならば、浅緋でも使えるかも、というものだった。

 それにしても片倉の慧眼には恐れいるばかりだ。
 確実に浅緋が拒否しなくて、素敵だと思うものをプレゼントしてくれている。

──すごく、いい香り。
 片倉の中でこのイメージが浅緋のイメージなのだとするととても嬉しい。

 きっと、今日も起きて待っていても怒られないはずだ。

 早く、帰ってこないかしら……。
 早く会ってとても嬉しいとお礼を言いたい。
 けれど、それは『お礼』もしなくてはいけない、ということでもあって。

 それに気づいた浅緋は急に顔が熱くなる。
 その熱くなった頬を押さえて、浅緋は首を横に振った。

 いえ!あの……その、別にすごくキスしたいとかそういうことではなくて……。
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