政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 怖がらせたり、嫌なことは一切したくない。
 大事な大事な人なのだ。

 意味はあった。
 距離を縮めることだ。

 さすがに園村が思慮深いと言うだけあって、浅緋は正しくその意味を理解した。

 しかも、片倉が思っていた以上に。



──心臓が破れそう……。

 いや、口から出るかもしれない。
 それくらいに、浅緋は今まで経験したことがないくらい、激しく鼓動が鳴っていた。

 片倉は今までだって大事にしてくれていた。
 これ以上はないほどに。

 そうして、浅緋に心の準備が出来るのも待ってくれた。
 この人なら大丈夫。

 ベッドに横たわっている浅緋を、上から見つめている片倉に浅緋はひたすらドキドキしてしまう。

 いつも精悍で整った顔立ちだとは思うけれど、甘やかで、これほどまでに嫣然(えんぜん)とした表情は見たことがなくて。

「浅緋……」
< 219 / 263 >

この作品をシェア

pagetop