政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 片倉のことは怖くもないし、素敵だと思う。
 けれど、その先をどうしたらいいのか浅緋には分からないのだ。

「浅緋さん」
 そうやって呼ばれることはとても嬉しいのに。

「バスルームをご案内しますね」
 片倉の穏やかで優しい笑みはいつもと変わらない。

 まるで、さっきの一瞬のことなどなかったみたいだ。

「はい」
 浅緋はバスルームを案内するという片倉の後ろについていった。



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