政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
片倉が取ってくれたその手を浅緋はきゅっと握る。

 浅緋はもう一度桜の木を振り返った。
 大きく枝を切っても何度も花を咲かせる。

 たとえ花を咲かせるための枝を切っても、大地にしっかりと根付いていれば、また新たに伸びた枝から花を咲かせることが出来るのだ。

 この木は自分にそれを教えてくれた。
 だからこそ一歩を踏み出すことが出来たのだ。

「浅緋……」
 気付くと、片倉も桜の木を見上げていた。

「いつかここに帰って来ませんか?」
「え?」

「今、ふと思ったんですよ。この場所で僕らの子供が走り回ってるのを想像したら、その光景のあまりの幸せさに言葉を失くしそうになった。とてもしあわせな光景だとは思いませんか?」

 浅緋にもその光景が見えたような気がした。
 この庭をきゃっきゃと走り回る子供の声さえ聞こえたような気がしたのだ。
 
「はい。とても素敵だわ……」
「浅緋、愛していますよ」
「私も愛してます」
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