政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋がマンションで暮らすようになって、朝食を取る今までならなんでもないルーティンが、一日のうちの一番大事な時間になった。



 そして、今は……
「ただいま」
「お帰りなさい! 本当に早く帰れたんですね」
 笑顔で、玄関で出迎えてくれる浅緋がいる。

「ただいま」
 片倉はにっこり笑った。

 行ってきますとお帰りなさいのキスは、膝の上で話をすることと同様、当然のルールなのだと真っ直ぐに浅緋を見て伝えた。

 少しだけ首を傾げたけれど、分かりましたと言って、こくんと浅緋は頷いたのだ。

 別に悪いことをしたとは思わない。
 それが片倉が決めた浅緋とのルールだから。

 だから浅緋が起きていて出迎えてくれる時は、キスをするまで玄関を上がらない、と片倉は決めている。

 浅緋は少しだけ照れたような顔をして、片倉に両手を伸ばすので、少しだけ屈むと両肩に手を置いた浅緋が軽く唇にちゅ、とキスをしてくれた。

「お帰りなさい。お疲れさまです」
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